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『国銅』

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国銅〈上〉〈下〉』を読みました。

国銅〈上〉 (新潮文庫)

国銅〈下〉 (新潮文庫)

ちびちび読もうと思ってゆっくり読み進めていたけど、途中から止まらなくなり一気に読んでしまいました。久々に想像の世界の中でいろいろな思いを馳せた体験でした。

人は、日々様々な形で学び、同性・異性を問わず他人を愛し、時には人を助け、時には愛する人の死にも直面する。そんな起伏の激しい毎日であっても、力強く、淡々と生き抜いていく。そういう人間本来の強さが描かれているのがこの『国銅』という小説のような気がします。

国銅』は、天平時代に行われた東大寺の大仏建立を取り巻く話です。

主人公の国人(くにと)は、自身の故郷である周防国(現在の山口県の東南半)や奈良の都で、大仏建立の役に就いています。周防では銅を作り、都では大仏の鋳造などに携わります。仕事は決して楽なものではなく、また都への移動や周防への帰郷も命がけです。

そういう希望の少ないような環境で、主人公の国人は様々な人と出会い、そして学び続けることで、自分の世界を広げていきます。

話は国人を中心に進み、いつの間にか国人と一緒に悩んだり、悲しんだり、時には喜んでいる自分に気がつきます。そうしているうちにあっという間に話は終わりを迎えます。

良いなと思ったのは、話の最後でぷっつりと何かが終わるわけではないということ。色々なことがあり、環境も大きく変わりながらも、まだ若い国人の人生はこれからも続いていく。そういう余韻を残して話は終わりますが、その余韻がこの先も生きていく希望のように感じられます。

我々個人というのは、時代の大きなうねりの中では、ただひたすらその中に身を任せることでしか生きていけません。よく「現代は今までにないほどの大きな変化が起きている」というようなことを言いますが、これは現代に限ったことではなく、おそらくどんな時代でも、その時代に生きている人はそう感じていたのかもしれません。

それだけ時代の流れというのは大きなもので、その中にいるひとりの人間というのは、いかにも頼りなく、か弱い。それでも、そういう時代の中で、どれだけ良く生きるか、自分の人生を最大化するのかというのは、個人にかかっているものであり、「どうにかできる」ものなんでしょうね。

そういう自分の人生を切り開いていく逞しさやひたむきさを、ひしひしと感じた読書体験でした。

国銅〈上〉 (新潮文庫)
帚木 蓬生

410128816X

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