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シンプルは組織から - 『僕がアップルで学んだこと』

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昨日のMacBook Proのエントリーに続いてアップルの話し。

WWDCのネタを拾いながらWIREDを読んでいたら、最近出た『Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学』の著者であるケン・シーガル氏のインタビューを見つけました。

シンプルに思考し、行動せよ。『Think Simple』の著者が語る、アップルだけがもつ魔法の哲学

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これを読むと、アップルがシンプルなのは、商品だけではないことがわかります。

そしてこの話し、つまりアップルが商品だけではなく、会社のあらゆるところでシンプルを志向していることがわかるのが、アップル在籍16年の元シニアマネジャー松井博さんの『僕がアップルで学んだこと 環境を整えれば人が変わる、組織が変わる』という本。

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発売後すぐに買って読んでいたのですが、今回改めて読み直してみました。

冒頭で出てくる組織の話しは、先ほど紹介したケン・シーガル氏のインタビューでも同じように伝えられています。誰が伝えても同じように伝わるというのは、本当の意味でシンプルに、社内で徹底されていたという証拠ですね。

個人的には、この本をアップルのプロダクトマネジメントがわかる貴重な本として読みました。

プロダクトマネジメント入門 第1回でも書いたように、プロダクトマネジメントは、プロダクトと顧客の間に位置して、プロダクトを通して顧客満足を生み出すために行うものです。この本では、そのようなプロダクトマネジメントの本質を「顧客のメリットを明快に定義する」として、次のように解説しています。

このように、コンセプトが顧客のメリットを簡潔に表現できない場合には、製品を形作るデザイン、価格設定、あるいはマーケティング・メッセージなどを正しく構築することができません。また簡潔で明快なコンセプトから生み出される製品は、そのコンセプトそのものが従業員を同じ方向に向けるため、プロジェクトの脱線や肥大化を防いでくれます。コンセプトが不明瞭な製品、あるいは不適切だった製品を見てみると、この「明快なコンセプト」がどのくらい重要なのかが鮮明になるのではないかと思います。(57ページ)

その上で、MoMAには所蔵されたけれどもなかなか売れなかったPower Mac G4 Cubeなどの例を出して、誤ったコンセプトがどんな結果になるのかを示しています。この事例は非常にわかりやすい!

じゃあ、アップルでの開発はどうなっていたかというと、次のように一貫しています。

明快な商品コンセプト、優れたデザインを開発工程の上流で生み出したうえで、そこから先の開発や製造はケチケチとシビアにやっていく。これがアップルの実像です。(中略)デザインやコンセプトを重視せずに行う製品開発は、構造的にコストが膨らみやすいアプローチです。(76ページ)

こうして軸がはっきりしていれば、自ずと「品質」への視点も変わってきます。

製品開発とは、製品のコンセプトやデザインなどの妥協すべきでないところは妥協せず、障害の総数、製造での歩留まり率など妥協すべきところは妥協しつつ、会社と顧客の双方がハッピーになれる価格と価値のバランスを探る行為ではないかと思います。「品質」を極端に聖域化してしまうと、障害を減らすことや歩留まりを上げることなどが目的化してしまい、本来注意を払うべきバランスを見失ってしまいます。(83ページ)

このような形でアップルのプロダクトマネジメント、そしてそれを支える組織の作り方が惜しげもなく書かれています。

さらに後半ではアップルというよりは、アップルで生き延びてきた著者の視点から一個人が今のような時代をどう生きていくべきかが示されています。

「シンプルにする」と言葉にするのは簡単で誰でもできますが、これを徹底するのがいかに難しいか。そして、その中で働くのがいかに刺激的で、強烈な体験なのかがよくわかる一冊です。

アップル本は次々と出てきますが、やはり実際に「中の人」として体験した人が書くアップル論はひと味もふた味も違います。自分にとっては、これからも何度となく読み返すことになるはずの本です。

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