質問から始めよう – 『しつもん上司術』

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ここしばらく、このブログを「社長ブログ」としてしまったせいで、何をどういうスタンスで書けば良いか迷っていたのですが、所詮自分は自分。

今までどおり日々感じたことを感じたように書いていきたいと思います。少しは仕事っぽい話しが多めになると思いますが、それは仕事のことを考えるのが楽しくて、どうしてもそれを考える時間が多くなってしまっている証拠だということで。

まずは質問から

日々、コンサルティングや研修などでお客さまと接していると、「人を動かす」ということに苦労をしている現場をよく目にします。『人を動かす』というそのものずばりのタイトルの本もありますが、本当に身近な例としてこんなところから。

  • 会議で意思決定をする
  • プロジェクトメンバーにアドバイスをする
  • 部下に指導をする

そういう状況でなかなかうまくいかない、という現場に遭遇をすると、多くの場合、なんとかして自分の意見を通そうと必死になってしまっているんですよね。

きっと、そうやって行動をする前にいろいろと考えたのでしょう。自分の頭の中でシミュレーションもしたのかもしれません。ただ、残念ながら、思い描いたとおりにことが進むことはほとんどありません

だから準備が不要だと言っているのではありません。準備は必要です。ただし、準備をしたからといって必ずしもうまくいくものでもありません。

そういう場面に遭遇したとき「ああ、もっとこの人が質問をうまく使えたらなぁ」と思うことが増えてきました。

「質問」というと、いわゆる世の中で言われているビジネススキルと比べて、簡単で、あまり重要ではないような印象を受ける人が多いかもしれません。

しかし、プロダクトマネジメントでいろいろな部門から集まってきたメンバーに動いてもらうのも、シナリオプランニングのファシリテーションをやっていて「もうひとこえドライビング・フォースを出してほしい」と思う時も、そこで効果を発揮するのは質問する力です。

たくさんある質問本

改めて質問の大切さ、そしてそれを伝える必要性に気づいてから、人に説明をするために「質問」に関する本を集中的に読んでいます。さすがに質問に関する本だけ読むわけにはいかないのですが、年内くらいを目途になるべく多くの質問本に目を通そうとしているところです。

ひとくちに「質問本」といっても、『あたりまえだけどなかなかできない 質問のルール』のような一般的なものから『すべては「前向き質問」でうまくいく』のように自分自身に目を向けるもの、営業向け『質問型営業で断られずにクロージング 営業は「質問」で決まる!』、コンサルノウハウ『コンサルタントの「質問力」』といった仕事術系、そしてイノベーションに関する『キラー・クエスチョン 常識の壁を超え、イノベーションを生み出す質問のシステム』といったところまで、実に多彩です。

(できれば年明けには、そういう成果をまとめて「ビジネスを進めるための質問」みたいなテーマでセミナーコンテンツにできるといいなぁと)

そこで、そんな中からいくつかお薦めの本を、気づいた時にご紹介していきたいと思います。

『しつもん上司術』

今日の一冊は魔法の質問でも知られている松田充弘さんの『しつもん上司術

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質問本の切り口はいろいろとありますが、この本のように上司と部下という関係をはっきりさせてまとめているというのは面白いですね。

「部下が自分の指示をきちんと聞いてくれない…」と感じているのであれば、それは自分がきちんと指示をできていない可能性があります。

この本では、そもそも部下を成長させるためになぜ「しつもん」なのか?そもそも、質問にはどんな種類があって、部下にはどんなタイプがいるのか?というような原則を確認するようなところから始まり、後半では具体的なケースを取り上げ、その場合に適切な質問の例を紹介しています。そのケースの種類はと言うと…

・部下の仕事をサポートするための「しつもん」
・部下が仕事に対して消極的なときにする「しつもん」
・部下の問題行動を正したいときの「しつもん」
・部下のメンタルをサポートする「しつもん」
・部下の成長を後押しする「しつもん」

といった分類がされていて、全部で25のケースが紹介されています。

どのケースも具体的で、思わず「これは使ってみよう!」と思ってしまうものが多いです。

仕事の現場で「しつもん」を使う意味や意義から、具体的な質問の例までをまとめた一冊で、ボリュームも多くないのですぐに読み終えることができます。「しつもん」が気になるあなたの最初の一冊としていかがでしょうか?

ちなみに「質問」とこの本で言う「しつもん」は何が違うのか?この質問の答えもなかなか面白いですよ。

仕事の意義を問う『MBB:「思い」のマネジメント』

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MBB:「思い」のマネジメント ―知識創造経営の実践フレームワーク』を読みました。

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自分はマジメな学生ではなかったので、学部生の時は一度も就職活動をせず、修士に行ってからも、インターンなんてものがあることさえ知らず、企業研究なんかもせず、なんとなくイメージで、しかもかなり遅いタイミングで就職活動を始めた。

そんな自分が持っていた唯一の問題意識は「なんで仕事をするんだろう?」という、聞く人からしたら子どもみたいな疑問だった。

就職してからも、最初に配属された部署の上司と新人数名で飲みに行った時に「なんで仕事しなきゃいけないんですかね?仕事って何ですかね?」みたいなことを聞いたが、結局、要領を得なかった。扱いにくそうな新人が来たなと思われたことだろう。

その後、最初に投げ込まれたプロジェクトは、そんな扱いにくいと思われる質問をする間もないところで、あっという間に時間が過ぎていった。

ただ、そういう問題意識が完全に抜け落ちてしまったことはなく、しかも最近になって改めて「仕事をすること」について考えている自分にとって、本書の帯に書いてある

仕事の楽しさとは何だろうか。自分はいったい何をやりたいのか

という言葉には大いに興味をひかれた。

本書では、従来のMBO(Management By Objective;目標によるマネジメント)に対してMBB(Management By Belief;「思い」のマネジメント)という考え方を紹介している。

MBBについては、本書の至るところで解説がされているが、そのひとつでは次のように説明されている。

ビジョンを抱き、仕事に対して自分なりの意味づけをし、信念と価値観を持って、仕事を通じて実現したい夢に向かっている個人。「自分はいったい何を目指したいのか」というイメージを抱いて仕事に向き合っている個人。こうした「思いを持つ」個人を想定するマネジメントの考え方がMBBである。(p.47)

ただし、個人が「思い」を持つだけでは十分ではなく、

自分が勝手に、独りよがりの思いを持っていても、それは知識経営にはつながらない。他者と交流する中で知を交差させ、ぶつけ合って、組織的に知識を正当化して、より高質な知識を生み出していくことが重要である。そのためには、最初は自分一人の思いに出発点があるとしても、それを他者と共有し、切磋琢磨し、組織的な思いとして磨き上げるプロセスが重要だ。(p.52)

とある。

このようなMBBのコンセプトやそれを実現するプロセスが詳しく解説されている。

多くの人が経験したことがあるMBOと、本書で紹介されているMBBは排他的なものではなく、車の両輪として組み合わせて使うものとされており、具体的にどう利用していくのかについても紹介されている。

途中には、MBBのケーススタディとして、「思い」に基づいて仕事をしている人や、MBBを実践している経営者が紹介されているので、MBBを具体的にイメージするのに役に立つだろう。特に星野リゾート社長の星野氏の話はなかなか参考になった。

以前に紹介した『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか』では、「学びたい!創造したい!世界をよくしたい!」という思いをモチベーション3.0と定義していたが、まさにそのような「思い」に基づいて仕事をし、マネジメントをしていくのがMBBだと言える。

・『モチベーション3.0』が問う私たちの働き方 – Stylish Idea
http://www.stylishidea.com/archives/1849

MBBとは、本書を読んだだけですぐに実行できるような簡単なコンセプトではないし、ましてや自分の会社がこのような制度を導入するまでには、多くの課題を克服しなければいけないかもしれない。

だからと言って「お勉強」でとどめるのではなく、本書でも紹介されている手法を使いながら、まずは自分の「思い」を確認し、それを日々の仕事の中でどう関連づけていくのかを考えることから始めるのが良いかもしれない。

「仕事は大変なものだ」「若いうちは苦労をしろ」という意見もわからないわけではない。

ただ、本当にそうだろうか?と立ち止まって考え(それは決して、そういう意見を全否定することにつながるのではない)、時間をかけて自分の「思い」を確認することは意義のあることではないだろうか。

本書で出てくる考え方の中でも「共通善(common good)」という言葉はとても印象に残っている。個人の「思い」とはいえ、それは独善的なものであってはならず、より質の高い、普遍的な価値、すわなち「共通善」に向かう必要があると本書では説いている。

先ほども紹介した『モチベーション3.0』といい、世の中が、仕事における個人のあり方を見直す方向に動いていると感じる。

そのような中では、決められた枠組みの中で、目の前の与えられたものをこなしていくのではなく、自分の「思い」を軸として、新しい価値を生み出していくことが求められているのだと思う。

とても刺激的な時代を、どう進んでいくのか。改めて自分の「思い」を探りながら、考えていきたい。

MBB:「思い」のマネジメント ―知識創造経営の実践フレームワーク
一條 和生 徳岡 晃一郎 野中 郁次郎

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