「サービス・イノベーションの促進に向けて」

以前に「サービスサイエンス」とは何かを読んで以来、ずっとサービスサイエンス関連の論文などが手つかずの状態でしたが、いつも参考にさせて頂いているblog「日々是弥縫」にて、同じ富士通総研の「サービス・イノベーションの促進に向けて」という論文を知ったので読んでみました。

・「サービス・イノベーションの促進に向けて」 : 富士通総研
http://jp.fujitsu.com/group/fri/report/research/2006/report-258.html

この論文では、サービスにおけるイノベーションが促進されていないのは、「サービスというものの定義が曖昧でターゲットが曖昧なこと、サービスのイノベーションのプロセスやメカニズムが解明されず、イノベーションを促進するためのポイントが明確になっていない(p.2)」という問題意識の元、サービス・イノベーション・モデルを提案しています。

まず、冒頭でサービスの定義として、サービスの「産業レベル」→「企業レベル」→「商品レベル」→「活動(プロセス)レベル」のレベルの違いを明確にしています。今までサービスをひとまとめてにして考えていたので、これは新たな発見でした。その上で、この論文ではサービスをプロセスのレベルで捉え、「サービスを提供する主体とサービスを受け取る主体との間で情報を交換することで価値を創出プロセス」と定義しています。

その後、イノベーション・プロセス・モデルの具体例として、クラインモデルを紹介し、イノベーション・モデルでのフローとストックの2階層の過程を紹介しています。(イノベーションモデルについては、このページを後でじっくり読んでみようと思っています)

その上で、以下のようなサービス・イノベーション・モデルを提案しています。(詳しくは論文の17ページを参照)

serviceinnovationmodel.JPG

このモデルのことを筆者は「エビデンス・ベースト・サービス型モデル」と呼んでいます。エビデンス・ベースト・サービスというのは、筆書は次のように述べています。

従来のサービスは、どちらかといえばサービス提供者側の勘と経験、ノウハウに基づくサービスであることが多かった。顧客数が少なく顧客のニーズが比較的明確な場合は、それはそれで重要な要素ではあるが、顧客に関する情報量が多く、顧客のウオンツレベルに対応したサービスが必要になっている場合には、それにプラスして、個別顧客のニーズを汲み取った説得・満足度獲得のため、客観的なデータをベースにして作られたサービスのモデルやリファレンス・データベースに基づいたサービス、すなわち「エビデンス・ベースト・サービス」が必要である。

今後、このようなエビデンス・ベースト・サービスに進展していく根拠として、ICTインフラが整備してきたこと、データマイニングなどの手法が整備されてきたことなどを挙げています。

この「エビデンス・ベースト・サービス型モデル」は、クラインモデルと同様、フローとストックに分かれていて、フローでサービス・コンセプトの開発やサービス・プロセスが実施されていき、その際、ストックであるサービスの原理原則(ビジネス知識、人間系知識、科学技術系知識)を活用していくようです。

このモデルは面白いですね。このストックに相当するリファレンスDBをどのように構築していくのかが難しそうですが、今まで漠然と「サービスサイエンス」と考えていたところに、たたき台というか、考えるきっかけを知ることができたのは収穫です。(自分の不勉強だけで、恐らく他にも色々紹介されているのだと思いますが)

まだまだ知らないことだらけなので、勉強を続けていきます。クラインの『イノベーション・スタイル』も読んでみます。

イノベーション・スタイル―日米の社会技術システム変革の相違 イノベーション・スタイル―日米の社会技術システム変革の相違
S.J.クライン

アグネ承風社 1992-07
売り上げランキング : 180088

Amazonで詳しく見る by G-Tools

研究レポート:「サービスサイエンス」とは何か

富士通総研のレポート「サービスサイエンスとは何か」を読みました。

・「サービスサイエンス」とは何か : 富士通総研
http://jp.fujitsu.com/group/fri/report/research/2005/report-246.html

2005年12月のレポートということで少し古いものですが、サービスサイエンス(SSME)の基本的なところ(特に国内での動向など)をつかむには良いレポートでした。

大まかにレポートの流れを紹介すると、「サービスサイエンスとは何か」という章で、サービスサイエンス出現の背景や定義を紹介しています。その後、米国でのサービスサイエンスの取り組みの紹介、最後に日本におけるサービスサイエンスの現状を紹介しています。

米国の事例の中では、サービスサイエンスとビジネスの関連で、ビジネスプロセスをコンポーネント化(部品化)するという事例として、CBM (Component Business Model) が紹介されていました。これは面白そうですね。以下のサイトをスタートとして後々調べていきたいです。

・IBM – Component Business Model: What it is
http://www-935.ibm.com/services/us/igs/cbm/html/bizmodel.html

・業界特化型SOAへのアプローチ(銀行の例) – 犬の耳
http://jisi.dreamblog.jp/blog/316.html

また日本の事例としては、企業の取り組みとして日本IBMと日立製作所の取り組み、そして大学や学会の取り組みも紹介されていました。大学の取り組みの事例としては、北陸先端科学技術大学院大学の亀岡教授のサービスサイエンスのシラバスが紹介されていました。

・シラバス日本語版 – K434[サービス・サイエンス論]
http://www.jaist.ac.jp/gakusei/kyoumu/syllabus/K434.html

レポートの量も、紹介されている参考文献の量もそこまで多くはないですが、サービスサイエンスの日米の(当時の)概要をつかむには良いレポートでした。

古いレポートを印刷してしばらく読んでなかった間に、富士通総研では新しいレポートも続々出ているようです。

・新サービス創出力とその規定要因― 娯楽関連サービスを中心として ― : 富士通総研
http://jp.fujitsu.com/group/fri/report/research/2006/report-280.html

・情報技術革新の進展が生み出すサービス・イノベーション : 富士通総研
http://jp.fujitsu.com/group/fri/report/research/2006/report-282.html

また、1/29にサービスに関するコンファレンスが開催されるみたいです。

・サービス・イノベーション促進に向けた課題 : 富士通総研
http://jp.fujitsu.com/group/fri/events/conference/conference-13.html

今回のコンファレンスでは、サービス・マネジメント、サービス・マーケティング、サービス工学の第一人者をお招きし、サービス研究の最新動向と将来の課題を展望致します。さらに、サービスに関するいくつかの研究事例や政策課題について検討・整理し、議論を深めたいと考えております。

『一橋ビジネスレビュー – サービスを科学する』

一橋ビジネスレビュー』の2006年秋号の特集「サービスを科学する」を読みました。

一橋ビジネスレビュー (54巻2号(2006年AUT.)) 一橋ビジネスレビュー (54巻2号(2006年AUT.))
一橋大学イノベーション研究センター

東洋経済新報社 2006-09
売り上げランキング : 120531

Amazonで詳しく見る by G-Tools

最新号のひとつ前の一橋ビジネスレビューの特集は「サービスを科学する」でした。以前に『IBM お客様の成功に全力を尽くす経営』を読んでサービスサイエンスに興味を持ち、もう少し詳しく知りたいと思い読んだのがこれ。

特集として、サービスサイエンス関連で7本の論文が収められています。各論文の概要を知りたい方は、このリンクを参照してください。以下、各論文の簡単な読後感です。

○「生活起点のサービスイノベーション」
○「顧客起点のサービスマーケティング」
→最初の2本は、生活起点と顧客起点という2つの観点からサービスを検証します。特に最初の「生活起点」の方は、挙げられている事例も身近で、更にサービスについての基礎的な考え方も随所で確認しているので、とても参考になりました。また、これらの論文の参考文献として近藤隆雄氏の『新版 サービスマネジメント入門―商品としてのサービスと価値づくり』と『サービス・マーケティング―サービス商品の開発と顧客価値の創造』が紹介されていたので、とりあえず前者を注文しました。

○「製造業のサービス化とサービスマネジメントへの2つのアプローチ」
→この論文では、同じサービスの中でも「プロセス型サービス」と「プロフェッショナルサービス」という2種類の観点から見ることができるということを学びました。『新版 サービスマネジメント入門―商品としてのサービスと価値づくり』はここでも紹介されていました。

○「サービス工学―製品のサービス化をいかに加速するか」
→タイトルの通り、サービスを工学的手法を用いて研究し、「サービスと顧客と満足度とを客観的に表現する方法を導入し、評価する方法を研究すること(本文より)」を目的としたサービス工学と、筆者らが開発したサービス設計支援システムを紹介しています。この論文はPDFで読めるようになっていました。(本書をスキャナで取り込んだみたい)

・サービス工学―製品のサービス化をいかに加速するか
http://www.comp.metro-u.ac.jp/smmlab/papers/2.2/2-2-15.pdf

また、この論文の参考サイトとして以下のサイトを紹介しておきます。

・東京大学人工物工学研究センター(RACE)
http://www.race.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/raceweb/top_index.cgi

・Service Creation Workshop – Squire for Service Studies
http://www.ws100h.net/service/

・サービス工学研究会 | Service Engineering Forum
http://www.service-eng.org/index.html

○「サービスサイエンス―サービスイノベーションを目指す多分野融合的アプローチ」
→サービスサイエンス(SSME)の概要と最近の動向について概観できる論文です。サービスサイエンスの体系や現状をわかりやすく確認できました。この論文が参考にしている、「サービス・サイエンスにまつわる国内外の動向」というレポートが下記のリンクから確認できます。

・Science&Technology Trends December 2005 feature article 01
http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/stfc/stt057j/0512_03_feature_articles/200512_fa01/200512_fa01.html

○「サービス産業政策の確立に向けて」
→経済産業省の方が書いた論文。現在の日本のサービス産業の概観と、今後の国としての取り組み内容がまとめられています。今後の発展が特に期待されるサービス産業として6分野を挙げ、それぞれの施策を紹介していますが、これだけではイメージがわきにくいものもありました。ただ、これについては紙面の都合で要点だけに留めていると書かれていますので、本体(下記リンク)を時間がある時に参照してみます。

・産業構造審議会サービス政策部会中間取りまとめについて 報道発表(METI/経済産業省)
http://www.meti.go.jp/press/20060609003/20060609003.html

○「サービスマネジメントに関する5つのイシュー」
→これが一番興味深かったです。この前の論文にもある国の取り組みを受けて、「経済成長の必要性→サービス産業の振興→サービス生産性の向上」という図式を単純に前提としてよいのだろうかという問題意識を元に論が進められています。タイトルにある5つのイシューとは

1. 生産性向上とイノベーション
2. サービス業と製造業
3. 標準化と個性化
4. 所有と使用
5. 不足解消ビジネスと不安解消ビジネス

です。「生産性とイノベーション」「成長と発展」というように、概念を対比させながら、それらの本質的な違いを明らかにして、サービスマネジメントについて議論していくという進め方は、とてもわかりやすいものでした。

今回は『一橋ビジネスレビュー』のうち、特集の部分しか読んでいませんが、その他の部分も読んでみたいと思います。前号から連載が始まっている「ネットワーク思考のすすめ」が特に面白そう。

1 2 3