ヤフーの組織変革 現在進行形 – 『爆速経営―新生ヤフーの500日』

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これは、なかなかテンションの上がる一冊。

レビュープラスさんから献本いただいた本ですが、そうじゃなければ、もしかしたら手を取らなかったかもしれない。偶然ではあるんですが、このタイミングで読むことができて良かった本です。

『爆速経営』について

爆速経営―新生ヤフーの500日』は、井上元社長から宮坂社長体制になってからの新生ヤフー株式会社の約1年半の快進撃をまとめた一冊。宮坂社長をはじめとして、現場の経営陣の生の声を拾いながら、新生ヤフーの特徴をいくつかの観点からまとめています。

本の中盤には、2013年10月7日に発表されたeコマース事業における新戦略、Yahoo!ショッピングやヤフオク!の「無料化」についての話しまで載っています。「ギリギリまでがんばったんだなぁ」と思って読み進めてみると、この件については、具体的な内容までは明かされていないものの、ヤフーの川邊副社長から直々に大きな発表があるので、発売をずらせないかという話しがあったようです。

そういう背景もあって読み返してみると、たしかにヤフーにとってあまりネガティブなことは書かれていません。

そんな点を取り上げて、この本を「ヤフーをヨイショしている本」と見ることもできなくはないですが、ヤフーの「爆速経営」について、現在進行形で起きている生々しい変化の記録として読めば、組織変革についての貴重なケースとして参考にできる点がたくさんある一冊です。

ヤフーの組織変革のプロセス

天才経営者と呼ばれる前任の井上氏の後を継いだ宮坂社長が進める組織変革のプロセスは、この本の最後にまとめられている図を元にすると、次の5つで進められてきました。

  1. 理念の再定義
  2. 行動規範策定
  3. 目標設定
  4. 戦略策定
  5. 具体化

こうしてステップをまとめてみると、至って当たり前のプロセスではあるのですが、そういう「原理原則」に従いながら、大胆に進められてきた結果、2013年4月〜9月の業績は連結売上高が前年同期比約20.2%増、連結営業利益で約14.5%増という2桁成長を実現しています。

Yahoo! JAPAN – IR関連情報 – 四半期業績レポート(2013年度 第2四半期)

これは、社長になる前に取り組んでいたプロジェクトの進め方について「自分たちができるかどうかよりも、ユーザーが喜ぶかどうかで企画を決めていた」とメンバーから評されている宮坂社長が持つ、元々の気質に依るところも大きいのかもしれませんが、本書に書かれている内容だけを元にすると、全体としてきれいな一貫性があることに気がつきます(もっとも、本として一冊にまとめた結果、そういう「ストーリー」になっているという可能性も否めませんが)。

イノベーション組織のつくり方

シンプルな言葉によって動かしていく手法など、具体的で、印象的な内容も多かったのですが、中でも特に面白いと思ったのが第6章「再活性化 見られるからこそ社員は輝く」と第7章「試行錯誤 「!」を生み続ける組織へ」の内容。

第7章の中では「創造力を高める環境づくりについては、どのような考えを持っていますか」という質問についての宮坂社長の考えが紹介されています。

(前略)
単純に考えれば、イノベーションを起こすには、結合する要素をたくさん持っている人を増やせということです。たくさんインプットして、いろいろなことを知っている人をたくさん採用していくということです。
同時にそういう人たちがどんどん会話をしないといけないと思うんですよ。組み合わせはどうしたら起こるかというと、会議ではなく会話を増やすことなんです。雑談からアイデアって生まれるんですよね。すると、やっぱりカフェのような会話の場が大切になってくる。そんなイメージが漠然とありました。

では、そもそもそういう組織をどう作っていくのかということがまとめられている第6章と合わせて読むと、ヤフーがこれだけの快進撃を続けてきた理由がわかります。

もちろん、現在までのヤフーの状況を生み出したのは、宮坂社長をはじめとする新経営陣であることはたしかであり、それは本書の第5章までを読むとはっきりわかります。ただ、そういう状況を引き起こしている組織を生み出した舞台裏が紹介されている第6章、第7章の状況がなければ、やはりここまでの変革は起きなかったんじゃないかと思ってしまいます。

以前に翻訳をした『90日変革モデル』では、組織変革を実現したさまざまな海外企業の事例が多く載っていましたが、その日本版の事例として現実感を持って読める一冊です。

そしてこれからのヤフーがどうなっていくのか気になる人にとっても、これまでの軌跡を振り返ることができる良い本ではないかと思います。

『90日変革モデル』

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2冊目の訳書がついに店頭に並び始めました!

実は既にプロフィールの部分には載せていたのでご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、新しい訳書は『90日変革モデル 企業変革を加速させる3つのフェーズ』というタイトルです。

90日変革モデル 企業変革を加速させる3つのフェーズ (Harvard Business School Press) (Harvard Business School Press)

Amazonの内容紹介をそのまんま引っ張ってくると、

Google CEOエリック・シュミット氏絶賛!!

グローバル化、IT化、競争激化、リエンジニアリングの失敗– 企業はどのようにして変わればよいのか?現代のビジネス環境に最適な「90日変革モデル」とは?

1990年代、インターネットと急速なグローバル化の到来によって、情報を容易に入手できるようになり、たくさんの新たな経営課題への取り組みや、組織風土や業務プロセスの再考に迫られた。しかし、当時もてはやされていたリエンジニアリングの取り組みのうち、約70パーセントが着手してから5年以内に失敗していることがわかった。イノベーションが起こる周期は短期化し、飛躍的な進歩が起きる頻度も増加したため、この新たなペースの速い社会では、断片的で段階的なモデルはもはや効果的ではなくなったのだ。したがって、本書では、リエンジニアリングへの批判や、その非効率性を受け、現代ビジネスで利用できる効果的な変革の実践方法である「90日変革モデル」というフレームワークを提示する。

これは、30日ごとに3つのフェーズに分け、各段階で問題を突き止め、実行計画を立案するもので、10年以上にわたる調査研究に基づいた方法論を用いている。過去20年間に変革を経た500社以上(3M、IBM、GE、日産、アップル、ベリサイン、ヒューレット・パッカードなど)のサンプルから、56のケースについて分析し、業界の経営者層へのインタビュー、ケーススタディ、記録文書の調査を通して、成功要因だけでなく、成功した企業が用いた特定の実践方法やツールを突き止めた結果から編み出された。

汎用性があり、外部のコンサルタントや特定のシステム導入等をせずに実行でき、特定の国籍にとどまらない事例であることから、どの企業にも適用できる実効性を伴った有益なモデルである。

という本です。

前作の『プロダクトマネジャーの教科書』も仕事が大変な時期とぶつかってしまい苦労をした(ご迷惑をおかけした)記憶がありますが、今回も仕事やそれ以外の点でバタバタした作業になってしまいましたが、何とか出版することができました。

作業中、いろいろとお気遣いを頂いた皆さま、本当にありがとうございました。

紀伊國屋では既に並んでいるようなのですが、ネットで調べると丸善やジュンク堂などはまだ置いていないようです。それ以外の書店にも近いうちに並び始めると思いますので、どうぞお手にとってご覧下さい(できれば買ってください)。